学生が製薬企業に就職しようと考えるとき、同時に希望の部署も考えると思います。
そこで理系(薬学部、化学系、医療系)と文系に分けて、代表的な部署(部門)について考えてみましょう。
理系(薬学部、化学系、医療系)の場合
理系の場合は大学院に進学したかしないかで大きく異なります。
1)大学院に進学した場合
大学院は修士(マスター)でも博士(ドクター)でも状況は同じです。
日本企業ではこれまで修士を採用することが多かったです。
しかし状況は変化しており、より専門的な博士の採用が増加してきています。
給与も博士の方が最初から高い、あるいは社内の技能として給与に増加があるなど、博士の優遇が多くなっています。
1−1)研究部門
大学院では研究室に所属するので、研究部門を希望する人も多いと思います。
研究部門は製薬企業の研究所に勤務することになります。
研究所はある程度の広さの敷地が必要であるため、つくばを筆頭に都会からは少し距離のある場所に立地することが多いです。
ただ研究部門は人員が少なく、狭き門になります。
大学の研究室と製薬企業が共同研究などで繋がりのあることも多いので、研究室からの推薦がもらえると就職に有利です。
- これは一般にはあまり知られていませんが、製薬企業との繋がりは大学というより、研究室や先生個人とであり、有名大学であれば製薬企業と繋がりが多いわけではありません。
- 同じ大学でも研究室、先生によって製薬企業への推薦がもらえるかどうかも違います。
- 先輩の状況を確認すると参考になります。
1-2)開発部門
大学院から志望する部署として、次に開発部門があります。
研究所から得られた有望な化合物、最近では抗体などの高分子であることも多いですが、これを人で試す、治験を行わなければなりません。
その治験を行うのが開発部門になります。
余談ですが、医薬品の開発にお金がかかるという話を聞いたことがないでしょうか。
このお金の半分以上、60%ー80%程度が治験費用となります。
参考;医薬品開発の期間と費用 -アンケートによる実態調査- 医薬産業政策研究所 2013年
開発部門は治験を行うので治験施設、すなわち病院に行くことが多くなります。
- 最近はweb会議も増え、また治験の患者の実際のデータをもらうモニターをCRO(Contract Research Organization、開発業務受託機)に外部委託することが増えたので、以前ほど病院を飛び回るという感じではないですが、出張の多い部署になります。
- また日本国内だけでなく多数の国で実施する国際治験も増えているので、英語力が必要となっています。
2)大学院に行かなかった場合
2-1)営業部門(MR)
製薬企業の営業はMR(Medical Representatives、医療情報担当者)と呼ばれ、MR認定試験もある専門職になります。
医薬品の情報を医師、薬剤師に、訪問あるいは講演会を開いて正しく伝えることにより医薬品の売り上げを伸ばす一助とします。
- MRは一昔前までは数ある営業部門の中でも専門性と給与水準の高さから人気でしたが、近年日本では大手製薬企業がMRの削減方針を打ち出し、先行きが厳しい状況です。コロナ禍でWebでの面談が増加し、訪問の必要性が少なくなったことも人員削減の一因と言われています。リスト
2-2)安全管理部門
製薬企業の部署の中で安全管理部門はあまり一般には知られていないのではないでしょうか。副作用の情報を集める部門というと分かりやすいかもしれません。
日本では医薬品の安全性情報を集めることを義務付けるGVP省令によって「販売部門から独立した安全管理統括部門の設置」や安全管理責任者をおくことが定められています。
- これは製薬企業はこれまでの数々の医薬品の副作用による事件から、副作用をいち早く知ることで被害を軽減するために、副作用の情報を集めることが義務となっているためです。
文系の場合
A)知財部門(特許)
製薬企業は医薬品という高度な知的財産(特許)にて利益を得る(商売する)ので、特許戦略は最も重要になります。
- そのため特許出願は外部の弁理士事務所に任せることが多いですが、特許の内容は研究、開発部門と知財部門が協議して素案を作成し、弁理士に仕上げてもらう企業が多く、医薬品に関する高度な知識が必要となります。
- また他社との特許係争(裁判)も扱うため、法的な知識も必要となります。
B)管理部門(総務、人事など)
総務、人事などに代表される事務部門は分かりやすい文系人材の就職先だと思います。
特に人事部門は人事教育、人事制度、採用など専門性が高く、人気の部署です。
C)営業部門(MR)
理系とともに文系でも営業部門は採用が多い部署です。
(理系2-1参照)
まとめ
学生が製薬企業に就職しようと考えるときに考える部署について、代表的な部署を挙げました。
- 理系(薬学部、化学系、医療系)の場合
- 1)大学院に進学した場合
- 1−1)研究部門
- 1-2)開発部門
- 2)大学院に行かなかった場合
- 2-1)営業部門(MR)
- 2-2)安全管理部門
- 文系の場合
- A)知財部門(特許)
- B)管理部門(総務、人事など)
- C)営業部門(MR)
- まとめ